女子大生でも気づかない方言
概要
今まで当たり前のように使い続けてきたことばを、
別の地域の出身者に使ったら、
通じなかった!
相手を凍りつかせてしまった!
そんな経験はありませんか?
それはさまざまな地域の人たちが集まる東京の女子大学で学ぶ学生さんたちも同じこと。
彼女たちの笑えない体験を元に、漫画形式のクイズにし、
さらに、漫画のセリフは出題者である女子大生の生の音声で聞くことができます。
もちろん、方言研究の第一人者による「そうだったのか」という解説もついています。
方言ネタで盛り上がれる新形式のコラムです。
編著・音声作成:篠崎晃一+東京女子大学篠崎ゼミ
マンガ、イラスト:井川きいろさん
プロフィール
篠崎晃一(しのりん)
東京女子大学教授。社会言語学。『アレ何?大事典』『ウソ読みで引ける難読語辞典』『ことばのえじてん』監修者。『例解新国語辞典』(三省堂)編集主幹。日テレ「ワーズハウス」監修者。Web日本語で『共通語な方言』連載中。
コラム記事一覧
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第34回「題目(だいめ)」(富山県)
【問題】 富山県出身の子が、長野県出身のゆきなと、AKBの話で盛り上がっています。 富山県出身の子が言った「題目(だいめ)」とはどういう意味でしょう? 協力者:大野美遊さん 【解説】 歌の歌詞を数えるとき、富山、石川では「1番、2番、…」ではなく、「1題目(だいめ)、2題目(だいめ)、…」と数えます。かつて加賀の国が、能の宝生流の盛んな土地だったと言うこともあり、そこで…
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第33回「ねまる」(鹿児島県)
【問題】 鹿児島県出身のゆほさんと、神奈川県出身のみかがピクニックに行こうとしています。 ゆほさんが言った「ねまる」とはどういういみでしょう? 協力者:松﨑夢歩(ゆほ)さん 【解説】 鹿児島をはじめ、九州の広い地域で、「腐る」ことを「ねまる」と言います。東北地方では、同じ「ねまる」が「座る」意味で使われています。 17世紀初頭に刊行された、イエズス会の宣教師が日本語をポ…
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第32回「あとぜき」(熊本県)
【問題】 熊本県出身のめぐさんの家に、東京出身のゆりが遊びに行きました。 めぐさんが言った「あとぜき」とはどういう意味でしょう? 協力者:山口 恵さん 【解説】 「あとぜき」とは、熊本では定番の表現で、「扉を開けたあとは閉めなさい」という意味です。学校の教室や職員室の出入り口にも注意書きとして貼られていることが多く、方言ということに気づきにくいことばです。 「あとぜき」…
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第31回「あおじ」(三重県)
【問題】 三重県出身のゆいさんと東京都出身のさきの会話です。 ゆいさんが言った「あおじ」とはどういう意味でしょう? 協力者:外池由衣さん 【解説】 ころんだり、ぶつけたりしたときに内出血によって生じる「あざ」を、三重では「あおじ」と言います。愛知や広島でも使うようです。語源としては、「地肌が青く変色する」から「青地」、「青く血がにじむ」から「青血」などが考えられます。「…
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第30回「かんます」(栃木県)
【問題】 神奈川県出身のみかが、栃木県出身のかおりさんに料理を教わっています。 かおりさんが言った「かんます」とはどういう意味でしょう? 協力者:大宮かおりさん 【解説】 栃木では、「かき混ぜる」ことを「かんます」と言います。この「かんます」は、「かき回す」が変化して生まれたことばです。関東地方では、「これだけ」を「こんだけ」、「追い出す」を「おんだす」のように語の一部…
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第29回「まくれる」(鳥取県)
【問題】 鳥取県出身のふうかさんと東京出身のゆりとの会話です。 ふうかさんが言った「まくれる」とはどういう意味でしょう? 協力者:加藤風香さん 【解説】 鳥取では、「まくれる」を「転ぶ」の意味で使います。共通語の「まくれる」は、「スカートがまくれる」のように、「上にあがる」ことを表現しますが、方言の世界では「転がる」「転げ落ちる」「ゴロゴロする」「転ぶ」などさまざまな意…
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第28回「ケッタ」(愛知県)
【問題】 愛知県出身のりささんと東京都出身のゆりが教室で会話をしています。 りささんが言った「ケッタ」とはどういう意味でしょう? 出演協力:協力者:岸 里砂さん 【解説】 愛知から岐阜にかけての東海地域では、自転車のことをケッタと言います。もともとは「(ペダルを)漕ぐ、踏む」ことを「蹴ったくる」ということから、「蹴ったくりマシーン(=機械)」が由来だと言われています。その後、ケッタマ…
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第27回「あいづ・ほいづ」(宮城県)
【問題】 宮城県出身のあいさんと、神奈川県出身のみかが学生食堂でご飯を食べています。 あいさんが言った「あいづ」「ほいづ」とはどういう意味でしょう? 出演協力:山本亜似さん 解説】 東北地方の方言には、語頭以外のカ行がガ行へ、タ行がダ行へと濁音に変化する特徴があります。また、山形や宮城などでは、指示語の「それ」が「ほれ」となるように、「そ→ほ」という変化も見られます。こうした規則によ…
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第26回「じらー(さ)」(沖縄県)
【問題】 沖縄県出身の子と東京出身ゆりが、一緒に大学の学園祭に行くところです。 沖縄出身の子が言った「じらー(さ)」とはどういう意味でしょう? 【解説】 「じらー」は、沖縄の若者たちが生み出した方言と言ってよいでしょう。「なんちゃって」という」感じを表現したいときに使うようです。「じら」は、もともとは「顔」の意味の沖縄方言で、「面(つら)」が変化したものです。色黒で彫の深い風貌を「う…
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第25回「はく」(北海道)
【問題】 北海道出身のあかねと神奈川県出身のみかが、夜、寒さに震えながら外に出かけました。 北海道出身のあかねが言った「はく」とはどういう意味でしょう? 北海道では、ズボンや靴下と同様に手袋も「はく」と言います。東北地方の北部の他、香川や徳島でも使われる用法です。『万葉集』や『源氏物語』などの文献には「太刀をはく」という用例が多くみられます。おそらく、「はく」はもともと「身に着ける、…
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