そのことば、江戸っ子だってね!?
概要
私たちが何気なく使っていることばの多くが、じつは江戸生まれだってご存じでしたか?
「江戸っ子」なことばたちを、江戸の人たちがどうやって生み出し、どのように育てていったのか、「へえ~」と思わずいいたくなる知識を、黄表紙や浮世絵の絵などとともにご紹介していきます。
プロフィール
棚橋正博(たなはしまさひろ)
1947年秋田県生まれ。 早稲田大学大学院講師。早稲田大学大学院修了。日本近世文学専攻。文学博士。 知られざる江戸の風俗文化を多くの人々に伝えることを使命としている。テレビや講演会などでも活躍中。 著書は『式亭三馬』(ぺりかん社)、『十返舎一九』(新典社)、『江戸の道楽』(講談社)、『江戸戯作草紙』『教科書が載せられない名文』『捏造されたヒーロー遠山金四郎』(小学館)など。
棚橋正博の公式サイトコラム記事一覧
-
第66回 「先払い」と「着払い」
夏のボーナスを目当てに、セールやお中元商戦が繰り広げられている。このWeb「日本語」を見ている方はインターネットをやっておられるだろうが、ネット通信販売でお中元を贈るというのが当たり前の時代が来るかもしれない。 ネット通販だと、商品代と送料を合わせた代金を発送前に支払い、代金到着を待って商品を発送するシステム、料金「先払い」制度を利用するか、商品を先に発送してもらい、商品が到着すると代金を支払…
コラムを読む -
第65回 6月の花嫁
近頃は結婚式を派手にやらない「ジミ婚」も流行っているようだが、やはりジューンブライドで、教会でウェディングドレスを、と夢見ている女性も少なくないことだろう。 江戸時代、将軍や大名、大家(たいけ)の旗本(はたもと)の結婚式は儀式化した豪華なもので、小身(しょうしん)の旗本や御家人(ごけにん)の結婚式は質素だった。これらは結婚という名の閨閥(けいばつ)作りでもあった。家禄があり、それを守るため子孫…
コラムを読む -
第64回 藤の花と銭の花
江戸時代からの藤の名所・亀戸天神(かめいどてんじん)では、毎年4月下旬から5月上旬ごろまで藤まつりがおこなわれ、歌川広重(ひろしげ)の絵に描かれたような見事な藤を今も見ることができる。例年、遅咲きの棚では5月中旬まで見られるが、今年はそれも早く終わってしまったようだ。 江戸の人びとは、桜が散り終わると藤の花に興じた。歌舞伎通の方なら、真っ暗な舞台が一転して明るくなり、大津絵から抜け出したように…
コラムを読む -
第63回 山東京伝の原稿料は?
ピッカピカの社会人一年生は、初めて給与をもった時節であろう。月末の給与袋が待ち遠しかったという世代はもう、サラリー(給与)でなく年金生活かもしれない。 江戸の戯作者(げさくしゃ)山東京伝(さんとうきょうでん)が、初任給というか、初めて出版版元から原稿料(印税)をもらったのは、寛政2年(1790)、『仕懸文庫(しかけぶんこ)』など洒落本(しゃれぼん)三部作を執筆した時だった。版元は、江戸の戯作や…
コラムを読む -
第62回 卯の花と豆腐
「卯(う)の花をかざしに関の晴着かな」。芭蕉に随行して奧の細道に旅出った門弟の河合曾良(かわいそら)が、元禄2年(1689)4月20日、奥州への玄関口である白河の関址(せきし)を越えるときの挨拶句である。 「卯の花」は、空木(うつぎ)の花のことで、初夏に白い花が咲き乱れる。江戸時代まで、俳諧では初夏4月の季語とされていたが、明治5年11月に新暦(太陽暦。グレゴリオ暦)が公布されてから5月の季語…
コラムを読む -
第61回 お金の話~両替~
4月1日から消費税8パーセント。駆け込み需要では、デパートなどが売り上げを伸ばしたようだが、4月からの消費の冷え込みが心配されている。庶民の財布には、おつりの小銭が増えるばかりかもしれない。 さて、今回は、お江戸の商売とお金の話。 江戸の三井呉服店(越後屋=三越伊勢丹デパート)は、新しい商法で成功した。ひとつは、店に商品を並べて売る方法。井原西鶴(いはらさいかく)の『日本永代蔵(にっぽんえい…
コラムを読む -
第60回 潮干狩り
雛祭(ひなまつ)りが過ぎると春らしい気候になるものだが、今年はいつまでも寒い日が続いていた。旧暦(太陰暦)では、今年は閏月(うるうづき)がある年にあたり、2月が2度あることになる。寒さが続いたのは、この月の満ち欠けが微妙に影響したのかもしれない。 例年、春分の日あたりが大潮(おおしお)となり、干満の差が一番大きくなる。今年の大潮は3月19日(理科年表による)、それから4月17日にかけての干潮時…
コラムを読む -
第59回 オリンピックとナンバ歩き
冬季オリンピックでは、深夜のテレビ観戦で寝不足になった方も多いだろう。日本各地にもたらされた記録的な大雪とともに、忘れがたいオリンピックとなった。 江戸時代、雪は豊年の貢物(みつぎもの)と喜びながら、しかし、雪の中で競技を楽しむ、すなわちスポーツに興ずるという考えはなかった。 江戸時代後期、鈴木牧之(ぼくし)は『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』(天保8年〈1837~41〉刊)で雪深い越後地方の風…
コラムを読む -
第58回 こまたの切れ上がった
ソチオリンピックが始まった。スキー・スケート・スノーボードなど、日本選手の活躍にTVから目が離せない。なかでもフィギュアスケートは、華麗な演技に目を見張るばかりだ。 江戸時代に「こまたの切れ上がった」という、すらりとした足の長い女性の容姿の形容とされる言葉があるが、彼女らのスタイルを見ていると、この言葉を思い出す。 「こまた」は、たとえば指と指のあいだ、首のうなじだとか、体のさまざまな場所を…
コラムを読む -
第57回 遊女のバーゲンセール
デパートなどでは、冬物のバーゲンセールたけなわである。今回は、江戸時代の吉原にもバーゲンセールがあったという話。 吉原遊びと世の中の景気は連動していたから、吉原では年の初めの正月に一年の繁栄を願うわけだが、正月2日の買初めでは、着飾る遊女に馴染(なじ)み客は豪勢に御祝儀をはずむ。 しかし、11日の蔵開(くらびら)きの頃になると息切れというか、廓(くるわ)の正月行事はひと息つく。1月後半は客を…
コラムを読む