そのことば、江戸っ子だってね!?
概要
私たちが何気なく使っていることばの多くが、じつは江戸生まれだってご存じでしたか?
「江戸っ子」なことばたちを、江戸の人たちがどうやって生み出し、どのように育てていったのか、「へえ~」と思わずいいたくなる知識を、黄表紙や浮世絵の絵などとともにご紹介していきます。
プロフィール
棚橋正博(たなはしまさひろ)
1947年秋田県生まれ。 早稲田大学大学院講師。早稲田大学大学院修了。日本近世文学専攻。文学博士。 知られざる江戸の風俗文化を多くの人々に伝えることを使命としている。テレビや講演会などでも活躍中。 著書は『式亭三馬』(ぺりかん社)、『十返舎一九』(新典社)、『江戸の道楽』(講談社)、『江戸戯作草紙』『教科書が載せられない名文』『捏造されたヒーロー遠山金四郎』(小学館)など。
棚橋正博の公式サイトコラム記事一覧
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第96回 初ナスは高級品
秋の味覚が恋しい季節になった。秋の野菜といえば、秋ナスであろう。 現代では、野菜はスーパーマーケットなどで一年中売られていて、ナスも季節感を失った野菜のひとつになってしまったが、旬の季節にはたくさん並ぶ。 江戸時代も、秋ナスは美味とされていたようで、「秋ナスは嫁に食わすな」という諺(ことわざ)があり、秋ナスは味が良いので息子の嫁には食わすなと、舅(しゅうと)や姑(しゅうとめ)が嫁いびりするよ…
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第95回 手鎖は「てじょう」と読む!
江戸の戯作者(げさくしゃ)を代表する山東京伝(さんとうきょうでん)が亡くなったのは文化13年(1816)の9月7日のことだった。その死亡の経緯については諸説あるものの、7日未明に脚気衝心(かっけしょうしん)のため、数え歳56で亡くなったというのが実説に近いだろう。 昔流の亡くなった年から数える数えの計算ですると、今年が京伝没後200年になる。 その京伝は数え歳31の年の寛政3年(1791)、…
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第94回 江戸の馬いろいろ
今年の夏は台風の当たり年になるのであろうか。これも異常気象の影響かと心配になるが、最近は台風が接近した地域とかなり離れたところで集中豪雨になるから厄介である。 夕立やゲリラ豪雨では、突如として限られた地域が豪雨に遭っているのに、空を見ると隣の地域には晴れた陽差しが見えることがある。これを馬の背中の左右にたとえ、片方はすさまじい雨降りで、片方は濡れてもいないこととして、「馬の背を分ける」という言…
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第93回 「つんつるてん」と「テンツルテン」
花火の季節を迎え、週末の夕方になると若い女性や男女のカップルが浴衣(ゆかた)姿で花火見物に出掛けるのを見かける。現代人は手足が長くなったせいか、浴衣の手や足の丈(たけ)が短くて、手足がにょきっと出たような印象となる。これを「つんつるてん」だと笑ってはいけない。 もともと浴衣というものは、浴場(銭湯)から出て、ほてった体を冷ますときに着るものだったから、丈が短いのは仕方のないことなのだ。江戸時代…
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第92回 地獄とエンマ様
お盆休みは海外旅行という御時世になった。 江戸時代も後半になった江戸では、お盆休み(7月16日前後の休み。「藪入〈やぶいり〉」)というと、奉公人は日ごろ行けないところへ行ったり、閻魔堂(えんまどう)をお参りし親元へ帰ったりするわけだが、それが海の向こうの海外とは夢にも思っていなかったろう。 お盆休みには「地獄の釜の蓋(ふた)が開く」と言った。地獄で罪障(ざいしょう)を犯した者を裁く閻魔様も休…
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第91回 江戸の売り声
「きんぎょーや、きんぎょー」、江戸の街を金魚売りがゆく。 金魚は、元和6年(1620)に朝鮮半島から渡来したとされる(『武江年表』)。半世紀もすぎると、品種改良された金魚は初鰹(はつがつお)より高い5両以上の高値で売れ、ヒマな大名や金持ちたちは金魚の品種改良に血道を上げたという。 安永年間(1772~80)頃になると、売り声は夏の風物詩ということになってくる。客が来ると天秤棒を下ろして客の望…
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第90回 行水
この5月は猛暑日続きで、観測史上最高気温の日が連続した月だったとのこと、こんなに暑いと行水(ぎょうずい)だというと、古いと笑われそうである。もっとも、よく考えれば行水しようにも小さなマンションの我が家には、そんな庭もない。 漢字で書くと「行水」と表記するように、もともとは神社・仏閣などの修行で身を潔斎(けっさい)するための水浴びが起源であった。その名残りで現在でも修行僧のあいだで行水は修行とし…
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第89回 おへそが茶を沸かす
新茶の美味しい季節である。 お茶が現代のように気軽に飲めるようになったのは江戸時代になってからである。そしてお茶が庶民の飲み物になった江戸中期以降、さまざまな「茶」にまつわる言葉も発生してゆく。 それは挙げるとキリがないほどであるが、「お茶の子さいさい(簡単にできる)」「お茶をにごす(ごまかす)」「茶にする(馬鹿にする)」「茶番(見えすいたこと)」などは日常的に今でも使われている言葉である。…
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第88回 江戸のベストセラーと付録
ピッカピッカの小学一年生が、重たそうに背負っていたランドセルも、しだいに板についてくる季節となった。 新入生や4月の新学期向けの特別号の雑誌は、今でも分厚い付録付きで出されている。ファッションや趣味の雑誌にも工夫をこらした付録のあるものもあり、書店の店先を賑(にぎ)わしている。 現代では、雑誌は日本全国津々浦々まで遅れることなく配送され、週刊誌などは全国同時発売が当たり前になっている。しかし…
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第87回 「年増」はほめ言葉だった
4月も下旬になると、通勤電車に乗っているリクルートスタイルの新社会人も会社勤めに慣れてきて、背広やスーツ姿も少し板についてくる頃である。 かつては、女性の新入社員を手ぐすね引いて待ち受けていたのが「お局(つぼね)さま」と呼ばれるベテラン女性社員であった。しかし、いまの若い世代ではこの言葉はもう死語になりかけているであろう。 おなじような語感で年上の女性をいう言葉に「年増(としま)」がある。「…
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