そのことば、江戸っ子だってね!?
概要
私たちが何気なく使っていることばの多くが、じつは江戸生まれだってご存じでしたか?
「江戸っ子」なことばたちを、江戸の人たちがどうやって生み出し、どのように育てていったのか、「へえ~」と思わずいいたくなる知識を、黄表紙や浮世絵の絵などとともにご紹介していきます。
プロフィール
棚橋正博(たなはしまさひろ)
1947年秋田県生まれ。 早稲田大学大学院講師。早稲田大学大学院修了。日本近世文学専攻。文学博士。 知られざる江戸の風俗文化を多くの人々に伝えることを使命としている。テレビや講演会などでも活躍中。 著書は『式亭三馬』(ぺりかん社)、『十返舎一九』(新典社)、『江戸の道楽』(講談社)、『江戸戯作草紙』『教科書が載せられない名文』『捏造されたヒーロー遠山金四郎』(小学館)など。
棚橋正博の公式サイトコラム記事一覧
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第46回 化粧水「江戸の水」の流行
美白化粧水でのトラブルが話題となっている。今も昔も女性の美肌への憧れはかぎりなく、さまざまな化粧水が生み出されてきた。夏の強い日差しに、日焼け止めや肌ケアーの化粧水はどれがよいか迷っている女性は多いかもしれない。 今からおよそ200年前、江戸の女性たちに人気を博した化粧水があった。化粧の下地にして白粉(おしろい)がよくのり、ニキビなどの肌荒れいっさいに効く「江戸の水」という化粧水である。これは戯…
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第45回 スイカと料理茶屋百川
夏の代表的な果物スイカ(西瓜)が日本に伝来したのは徳川時代の寛永年間(1624~44)のことだと、農学者・宮崎安貞(やすさだ)などが唱えてから、それが江戸時代では常識化していた。しかし、江戸幕府開闢(かいびゃく)と同時に刊行された『日葡(にっぽ)辞書』に「スイカ(水瓜)」の語が載っているので、すでに江戸時代より前に栽培されていたことがわかる。伝来時期は、南北朝時代(1336~92)以前に遡(さか…
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第44回 富士山噴火と江戸っ子の経済
富士山が世界遺産に登録された。7月1日には山開きが行われ、登山者は増加の一方だという。富士山関連の本やグッズなども次々に出されて大人気である。 古来より日本人が崇(あが)めてきた富士山は、名所を描いた北斎や広重の浮世絵は言うまでもなく、江戸時代のお江戸の風景になくてはならないものだった。図版のような、江戸を俯瞰(ふかん)する絵にも背景に富士山が描かれている。 さて、富士山が江戸時代に噴火したのを…
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第43回 江戸の朝顔ブーム
梅雨が明けると一気に暑い夏。今はクーラーがあるから快適だが、むかしは夏を涼しく過ごすためにさまざまな工夫をこらした。ことに朝晩の涼しさをいつくしんだ暮らしはなつかしい。 蚊帳(かや)は、夏の夜の風物であった。 加賀の国(石川県)の千代女(ちよじょ)は、夫を失ったあと、「起きて見つ寝て見つ蚊帳の広さかな」と詠(よ)んだとの伝説がある(実際は遊女浮橋の句とされる)。「お千代さん蚊帳が広くば泊まらうか…
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第42回 ところてん(心太)売り
江戸に暑さがやってくると、「ところてん売り」が街中を歩いた。その売り声は、「ところてんや、てんや」。この売り声を詠(よ)んだ川柳がある。 心天(ところてん)売は一本ン半に呼び (『誹風柳多留』91編、文政9年〈1826〉刊) ところてんを数えるのを1本、2本と言ったようで、呼び声が一度と半分であることをうがった句である。 図版を見てほしい。ところてん売りが、ところてんを…
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第41回 冷や水売りと白玉
冷たい飲み物が恋しい季節となった。 江戸時代には、「冷(ひ)や水売り」という商売があった。冷たい水を入れた荷台を担ぎ、街中を次のような呼び声で売り歩いていた。 氷水あがらんか、冷(ひやつこ)い。汲立(くみたて)あがらんか、冷(ひやつこ)い(『浮世風呂』4編〈文化10年(1813)刊〉) 暑い日に、日陰で飲む丼一杯の冷や水は、格別だったことだろう。 江戸は水質が悪い土地柄だったから、すでに1…
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第40回 遅まき唐辛子
ガーデニングの季節である。緑のカーテンが夏のエコ対策として推奨され、ベランダや庭でゴーヤやヘチマなどを育てる方も多いだろう。夏にこれらの葉を繁々(しげしげ)と繁らせるためには、今頃、種をまかねばならないが、ついつい忘れてしまうことがある。梅雨が過ぎてからあわてて苗を買ってきたのでは、夏のエコ・カーテンにならずに終わってしまう。 時機に遅れてしまうことを、「遅まき唐辛子(とうがらし)」と言う。「遅…
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第39回 デパート商法は、江戸時代からはじまった?
4月もあとわずか、新入社員の真新しいユニフォームも板についてきた頃である。 社員のユニフォームといえば、駅員や銀行員などとならんで、デパートの女性店員が思い浮かぶ。子どもの頃、そのユニフォームを見て清楚な印象を抱いたものだが、子どもだけではなく大人もそうだったろう。制服はデパートの戦略でもあった。 また、デパートといえば、昔の楽しみは食堂であった。以前、江戸っ子を自認する人に、親に三越デパートへ…
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第38回 江戸のサラリー事情
ピッカピッカの一年生が背負う黄色いランドセルが大きく見える時季である。同時に、新しいスーツに身を包んだ新人サラリーマンたちの姿もちらほら見うけられる。 今年の春闘ではベースアップ満額回答の企業もあったようで、新入社員諸君にとっては、初めてもらう「賃金」が気になるところでもあろう。 今回は、江戸時代の賃金の話である。 まず、「賃金」と書いてなぜ「ちんきん」と読まず「ちんぎん」と読むのか、ご存知であ…
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第37回 「花見酒」の経済
花見の季節。うきうきと浮かれる気分になるのは、江戸の頃からもおなじである。 花見の落語といえば、「花見酒」や「長屋の花見」、「花見の仇討(あだうち)」が頭に浮かぶ人もあろう。番頭さんが花見ではめを外して旦那にばったり出会う「百年目」や、頭に桜の木が生えてくるナンセンス噺(ばなし)の「あたま山」を思い浮かべた人は、相当な落語通である。 「長屋の花見」は、貧乏長屋の面々と大家さんが繰り広げるドタバタ…
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