そのことば、江戸っ子だってね!?
概要
私たちが何気なく使っていることばの多くが、じつは江戸生まれだってご存じでしたか?
「江戸っ子」なことばたちを、江戸の人たちがどうやって生み出し、どのように育てていったのか、「へえ~」と思わずいいたくなる知識を、黄表紙や浮世絵の絵などとともにご紹介していきます。
プロフィール
棚橋正博(たなはしまさひろ)
1947年秋田県生まれ。 早稲田大学大学院講師。早稲田大学大学院修了。日本近世文学専攻。文学博士。 知られざる江戸の風俗文化を多くの人々に伝えることを使命としている。テレビや講演会などでも活躍中。 著書は『式亭三馬』(ぺりかん社)、『十返舎一九』(新典社)、『江戸の道楽』(講談社)、『江戸戯作草紙』『教科書が載せられない名文』『捏造されたヒーロー遠山金四郎』(小学館)など。
棚橋正博の公式サイトコラム記事一覧
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第 6回 なでしこジャパン
2011年の流行語大賞が「なでしこジャパン」になった。 女子サッカーワールドカップでの初優勝は、震災後の日本のもっとも明るい話題であった。地元ドイツを破り、強敵のアメリカを破っての「大和(やまと)なでしこ」の勝利は、サッカーファンばかりでなく、にわかサッカーファンをも狂喜乱舞させた。 「なでしこ」の花言葉は、大胆・勇敢・野心・器用・才能とある。なるほどと思われる。ほかにも純愛・燃える愛とあれ…
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第 5回 「どさくさ」「ざぎん」「やじお」
ヨーロッパではギリシャが財政破綻、イタリアも首相辞任で大騒ぎ。古代ヨーロッパ文明の発祥地の「どさくさ」にまぎれて、日本ではギリシャ神話の神々の地(オリンポス)を社名にする会社の経営があやしくなっている。 「どさくさ」は、現代でもよく使われる言葉だろう。 「くさ」は「定まらないさまを表す」語。接尾語のようなものだと理解されてもよかろう。問題は「どさ」のほうなのである。 「どさ」は江戸時代、博徒(ばく…
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第 4回 売れっ子
今、「売れっ子」というとさしずめ「AKB48」あたりであろうか。総選挙とかじゃんけん大会とかで毎年大騒ぎ。今年は紅白応援隊までつとめている。なんだ、若い娘(こ)を「十把一絡(じっぱひとから)げ」で売り出して、という憎まれ口はやめておこう。 ひと昔まえなら、毎晩、お座敷がかかって人気のある芸妓を「売れっ子」と言った。江戸時代なら、柳橋の芸者といったところであろうか。 この「売れっ子」という言葉は、い…
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第 3回 「どじょう」は江戸のファストフード
一国の総理大臣が自らを「どじょう(泥鰌)」になぞらえ、泥臭さでがんばっているという。「どじょう」は滋養強壮によいとされ夏の季語になっているが、そろそろ鍋が恋しい季節。今回は「どじょう汁」の話である。 さて江戸時代、「どじょう」は、ほかに「どぢゃう」「どじゃう」「どぜう」「どでう」とも書いて一定しない。四文字では縁起がわるいからと三文字で「どぜう」と書いたことや、「どぜう鍋」の元祖という老舗もあるが…
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第 2回 善玉・悪玉 その2
医者に「悪玉コレステロール価が高いですね」と言われると、患者の胸はドキリとする。「悪玉」という言葉が持つインパクトが、そうさせるのである。 寛政2年(1790)、寛政の改革のまっただ中に出版された『心学早染草(しんがくはやぞめぐさ)』は、松平定信(さだのぶ)が退場したあとも再版をくり返し、以後6年を過ぎても売れつづけた。そして、善玉・悪玉シリーズの黄表紙(きびょうし)として、『人間一生胸算用(にん…
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第 1回 善玉・悪玉 その1
「善玉菌」とか「悪玉コレストロール」という言葉をいちどは耳にしたことがあると思う。この「善玉・悪玉」という言葉がうまれたのは、江戸時代の大人のマンガ・コミックともいえる黄表紙(きびょうし)『心学早染草(しんがくはやぞめぐさ)』からである。 人間の心のありようをつかさどる魂(たましい)を半裸姿の絵で描き、人が善魂に支配されると善行をつみ、悪魂に取りつかれると悪行に走る、というわけである。悪魂は、まる…
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