そのことば、江戸っ子だってね!?
概要
私たちが何気なく使っていることばの多くが、じつは江戸生まれだってご存じでしたか?
「江戸っ子」なことばたちを、江戸の人たちがどうやって生み出し、どのように育てていったのか、「へえ~」と思わずいいたくなる知識を、黄表紙や浮世絵の絵などとともにご紹介していきます。
プロフィール
棚橋正博(たなはしまさひろ)
1947年秋田県生まれ。 早稲田大学大学院講師。早稲田大学大学院修了。日本近世文学専攻。文学博士。 知られざる江戸の風俗文化を多くの人々に伝えることを使命としている。テレビや講演会などでも活躍中。 著書は『式亭三馬』(ぺりかん社)、『十返舎一九』(新典社)、『江戸の道楽』(講談社)、『江戸戯作草紙』『教科書が載せられない名文』『捏造されたヒーロー遠山金四郎』(小学館)など。
棚橋正博の公式サイトコラム記事一覧
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第16回 初鰹
初鰹(はつがつお)と聞けば、山口素堂(そどう)の句「目には青葉山時鳥(やまほととぎす)初鰹」(延宝6年〈1678〉)を思い出す人もおおかろう。甲斐国(かいのくに、山梨県)から江戸へ出てきて松尾芭蕉(ばしょう)などと親交を結んだ俳人・素堂が、江戸人たちが初鰹を珍重賞味する初夏の風物を詠(よ)んだものである。 「初物(はつもの)を食えば七十五日長生きする」という俗説は、江戸ばかりでなく大坂でも言わ…
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第15回 端午の節句
5月5日のことを、近頃では、「端午(たんご)の節句」という言い方はあまりせず、もっぱら「子どもの日」とか、ゴールデンウイークの「5日(いつか)の休日」と呼ぶようになった。 そもそも端午の節句とは、中国の厄払(やくはら)いの行事が日本に渡来し、大化の改新(645)以後に5月5日の行事に定められ、軒先に菖蒲(しょうぶ)や蓬(よもぎ)を掛けて邪気をはらう風習になったというから、歴史のある年中行事であ…
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第14回 菜の花と吉原
東日本大震災で被害にあった東北地方でも、菜の花が咲き、桜の季節を迎えるころとなった。復興は牛の歩みのようだが、かくじつに春はやって来る。 落語の「唐茄子屋政談(とうなすやせいだん)」(別名「かぼちゃ屋」、「唐茄子屋」とも)には菜の花の句が出てくる。その噺のあらすじを、まず紹介しておこう。 吉原遊びで散財ばかりして勘当(かんどう)された若旦那は、あちこちで居候(いそうろう)も断られ、とうとう誰…
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第13回 江戸の花見
桜の開花予想などが出てくる季節になると、江戸っ子ならずとも、どこか浮かれた気分になってくる。その浮かれ気分が花見酒となるせいで、昨年の東日本大震災(3・11)の直後、東京でも花見が自粛されたことは記憶にあたらしいところである。 花の季節といえば、西行(さいぎょう)の「願わくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月(もちづき)のころ」という和歌を思い起こすむきもあろう。西行は果たして願い通りに、文…
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第12回 寺子屋入り
春は卒業・入学のシーズンである。最近では、国際化という事情から、秋に入学式をしようという大学があらわれている。ひと騒動になるかもしれない。 江戸時代、初午(はつうま)、すなわち旧暦2月(今の3月初旬)の初めての午(うま)の日は、学齢期(数え歳7、8歳)に達した子どもが「寺子屋入り」をする日であった。親に伴われて、先生であるお師匠さんに挨拶に行くのである。寺子屋に入ることを、山登りになぞらえて「…
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第11回 雛祭り
3月3日は雛(ひな)祭り、女の子のつつがない成長を祝って内裏雛(だいりびな)などを飾っておこなう年中行事である。江戸時代には「上巳(じょうみ)の節句」とも、「桃の節句」とも呼ぶようになった。庶民が子どもの成長を願ってする雛流しや、宮中の女の子がする雛遊び(ままごと遊び)が起源だったようで、雛遊びは『源氏物語』などにも見える。江戸時代になってから、3月3日の雛祭りとなり年中行事化したわけである。 …
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第10回 手前味噌
味噌は健康によいスローフード。寒仕込みで手作りされた方もいることだろう。これはまさに「手前(てまえ)味噌」なのだが、自分で自分のことを褒(ほ)めたり自慢したりすることもこういう。 江戸時代、自慢することを「味噌を上げる」と言った。また、自分に都合よくふるまうことを「手前味噌」と言った。『諺苑(げんえん)』(寛政9年〈1797〉成立)には「手前味噌で塩が辛い」(塩が辛いというのは、自分の都合のい…
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第 9回 命の洗濯
お正月は、おだやかでのんびりした風情がある。初詣、おせち料理、各地の祭り……。今年のお正月休み、みなさんも少しは「命の洗濯」をされたことだろう。 さて、この「命の洗濯」という言葉は、江戸のことわざ辞典類にも早くから見え、古くからいっぱんに言われていたものであった。江戸末期の国語辞典『俚言集覧(りげんしゅうらん)』には、「久しぶりにて魚類美味を喰ひたる時にかくいふ」と注釈し、井原西鶴(さいかく)…
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第 8回 七福神詣
正月といえば初詣だが、今も各地で七福神詣が行われている。 最近では、七福神めぐりをするとご利益(りやく)があるうえに、七福神のキャラクターグッズも集められるとあって、若い女性たちの姿もちらほら見かけるようになった。 七福神とは、恵比寿(蛭子、えびす)・大黒天(だいこくてん)・毘沙門天(びしゃもんてん)・弁財天(べんざいてん)・布袋(ほてい)・福禄寿(ふくろくじゅ)・寿老人(じゅろうじん)の七…
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第 7回 大掃除と忠臣蔵
暮れの12月13日というと、江戸では大掃除の日で、どこの家もてんてこ舞いだった。これが終わるといよいよ年末の大晦日(おおみそか)と正月を迎えるわけである。大掃除は、竹箒(たけぼうき)で天井の煤(すす)を払ったりするので、「煤払い」とも呼ばれていた。 一家総出で「煤払い」が無事に終わると、家人の誰彼となく胴上げされる習わしがあった。ふだんは嫌なことばかり言って叱る番頭が胴上げされて、放り上げられ…
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