日本語を使う日々
プロフィール
吉田戦車(よしだ せんしゃ)
1963年岩手県生まれ。1985年に漫画家デビュー。 『スポーツポン』『ぷりぷり県』『殴るぞ』など作品多数。現在は、ビッグコミックスピリッツ誌上にて『ひらけ相合傘』を好評連載中。第37回文藝春秋漫画賞を受賞した『伝染(うつ)るんです』は2009年にアニメ化され再び話題に。また、『吉田電車』『吉田自転車』『戦車映画』などのエッセイ、『吉田戦車の逃避めし』(ほぼ日刊イトイ新聞にてほぼ毎日更新中)など漫画以外でもその才能をいかんなく発揮。今回「ニホンゴ」をテーマに月1回連載するに当たって、決意表明のためか緊張のためか、初の(?)ネクタイ姿で登場(自画像が、です)。
コラム記事一覧
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第六回 「門の外の漢、門の前の子供」
これを書いているのは掲載のだいたいひと月前なので、正月の話題から入らせていただきます。 暮れに帰省をすませ、正月は東京で迎えた。 近所の小さい神社に初詣に行きがてら町を散歩し、のんびりした空気を味わったのだったが、門松というもののよさを再認識した正月でもあった。 あのいかにも「ザ・門松!」というような立派なもの以外にも、笹と松飾りをうまいこと組み合わせた楚々とした飾りなど、様々なバリエーションがあ…
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第五回 「ごちそう尽きて、ごちそうさま無し」
2007年度小学館コミック編集部の謝恩会に出かけた。 ここ数年は連載のしめきりと重なり、昨年は行けなかったし、行けても原稿データを入れたCD-Rを二次会会場にいる担当編集者に届けに行ったついでにちょっと飲む、みたいなことしかできなかった。 久しぶりに帝国ホテルで開かれる盛大な一次会に行ってみようと思ったのは、伊藤先生とともにあいさつしてまわることで、 「悪い冗談じゃなかったんだ」 ということを、人…
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第四回 「苦手な服を買う理由」
背広ってなんだ? と思うわけです。 スーツ発祥の地、イギリス人の背中はそんなに広いのか。 それとも、毎日出勤するお父さんの背中の、子供から見た広さをあらわしているのか。明治時代(か、どうか知らないけれど)スーツを訳すときに、輸入業者かあるいは仕立屋が、自分の子供に意見を求めたとでもいうのだろうか。 「着物よりも、お父さんの背中が広く見えます。文明開化の広さですね。そうだ、背広、って呼んだらど…
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第三回 「明日、談笑します」
あれこれあって、先日婚姻届を出した私。 占い師(知人の小1の娘)には 「あなたは3回結婚する」 と占われたが、そんなことにならないように努力する日々だ。 今回は、その新生活に関係する日本語を、何か使ってみようと思う。 同業者との再婚を世間に公表したということで、書くものもこれから何かしら変わってゆくのかもしれず、その第一歩である。 関係各位には失礼な表現のオンパレードになるかもしれない…
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第二回 「一筋縄でいってみる」
一筋縄、という日本語がある。 おもに「一筋縄ではいかない」のように使われ、園芸品店で「一筋縄、特価198円」などという使われ方をすることは、まずないように思われる。 こうなってほしいと希望する案件があるが、そう簡単にはいかないだろう、むずかしいだろう、というような意味であり、「あのおやじは一筋縄じゃいかねぇから」というように、人に対しても使われる。 自分はどうだろう。 数分考えてみたが、…
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第一回 「月夜、スーパーで使う」
日本語を母国語とする国に住んでいる我々だが、朝起きて窓をあけ 「さあ今日も日本語を使うぞ!」 と決意しながら始まる一日は、外国からの留学生でもなければ、ふつうないだろう。 そこをあえて「使う」ということにこだわってみることはできないか、というのが、この小文のもくろみである。 さあ使うぞ、日本語を。 先ほど閉店間際のスーパーに行ってきたのだが、そのような心がまえで買いものにのぞむと、いろい…
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