日国第三版 ことはじめ
第4話 確かさの要
©久木ゆづる/小学館
日国改訂で欠かせない作業が、今回のテーマである「出典検討」です。
用例は、見つけてもすぐに採用できるわけではありません。どの文献に、どんな形で、どんな意味で、どんな文脈で使われているのかを、慎重に確認する必要があります。そして最終的に掲載に値するかどうかまで見極める。この丁寧な検証を担っているのが、資料の扱いに長けた専門家「出典検討班」です。彼らの手で、膨大な文献の海からひとつひとつの文章がすくい上げられ、結果としてそれが辞書の「確かさ」を支えることになります。
用例は、言葉が生きていた証そのものです。だからこそ、その出典を吟味することは、辞書の信頼を支える根幹となります。『日本国語大辞典』の第二版が刊行されたあとも、出典検討班はより良い用例がないか調査したり、既存の用例の確認をやりなおしたりと地道かつ堅実に作業を続けていました。
松井栄一先生をはじめとする多くの先生方が、第二版刊行後も集めつづけていた用例も合わせ、その成果がいま第三版の改訂へとつながっています。言葉への飽くなき探求心が、日国という辞書を生かしつづけてきたのです。
「出典検討」とは、過去の言葉と現在の私たちをつなぐ橋を架ける営み。目立たないけれど、辞書づくりの舞台裏で静かに燃える情熱が、そこにあるのです。
(新人ハムス)
【第5話もお楽しみに!】
概要
いよいよはじまった日本最大の国語辞典『日本国語大辞典』の大改訂。30年の一度の大プロジェクトに、新人編集者の主人公(白部ことは)が抜擢。意気込みと辞書愛は十分、でも知識と経験はまだまだ? 先輩編集者の助けも借りて、この難事にいどみます! 『日本国語大辞典』の詳細もわかる半実録マンガが登場!!
プロフィール
                久木ゆづる
東京都出身。漫画家、イラストレーター。2018年よりKADOKWA COMIC BRIDGEより漢和辞典編集者をテーマにした『じしょへん』(全6巻)を刊行。児童向けジャンルでも活躍中。著書に『凛々と咲く 八重の桜』全2巻(2013年 KADOKAWA)、『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史』14巻本文(2015年 KADOKAWA)『角川まんが学習シリーズ まんが人物伝 チャールズ・シュルツ』(2019年 KADOKAWA)、『コミック版 世界の伝記57 ミヒャエル・エンデ』(2024年 ポプラ社)など。
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