第14回「被災地への年賀状は?」
郵便局や文具店、コンビニエンスストアでも「年賀はがき」を見かける時季になりました。今年は東日本大震災後ということで「おめでとう」という言葉を使っても良いものかどうか迷うという人も多いと聞きます。年賀状の印刷でも、賀詞を省いたり日の丸がデザインされたりしたものも注目されているようです。
さて、大きな災害で多くの方が被害に遭われた今年、被災地に知り合いの方がいらっしゃるという方も多いことでしょう。では被災地への年賀状はどのように書いたらよいのでしょうか。「おめでとう」というお祝いの言葉は、やはり避けるべきなのか、失礼になるのか、などと迷うことがあるかと思いますが、必ずしもそうとは言えないのではないかと感じます。
「年賀」とは、新年のお祝いや年始の祝賀という意味をもちます。ですから、喪中関連の挨拶状は、「年賀状」ではなく、「年始状」「年始のご挨拶」「新年のご挨拶」などと呼ぶのが一般的です。通常の新年の挨拶では、「新年おめでとうございます」という言葉を使いますが、これは新しい年をともに祝うという意味で書かれるものですから、決して相手に対して無礼ということはないと思います。しかし、そうは言ってもやはり「おめでとう」という言葉は使いにくいと感じるのであれば、「謹んで新年(年頭)のご挨拶を申し上げます」や「謹んで新年(新春)のお慶びを申し上げます」「謹賀新年」などの表現に換えることもできるでしょう。
年賀状の代わりに「寒中見舞い」を出すのもよいと思いますが、あまり気を使いすぎて、反対に何も出さないというのも、また寂しいものです。だれしも自分のことを気に掛けてくれたという気持ちは嬉しいものですし、こちらの心を届けるという意味でもやはり何らかの形で挨拶状を出したいものです。賀詞にとらわれてばかりいるよりも、むしろ新しい年を迎えることができたことをともに喜ぶという年賀状本来の意味を重んじ、ひと言でも、相手を思う言葉を添える心づかいを一層大切にすべきではないでしょうか。
こんな時こそ、年賀状や寒中見舞いに自分の手書きの一言を添えて、相手に思いを伝えましょう。
【文例1】
昨年は思いも寄らないたいへんな年でございましたね。
皆様ご無事でいらしたこと本当に何よりでございました。
まだ何かとご不自由な事がおありかと存じますが、
どうか一日も早く、落ち着いた生活を取り戻されますよう、
心よりお祈りいたしております。
もしも何か私どもでもできることがあれば、
どうか遠慮なくおっしゃってくださいね。
新しい年のご健康、お幸せを願って。
【文例2】
○○さんの前向きなお気持ちに、かえってこちらが励まされたような
元気を与えていただいたような思いがいたしました。
今年は佳き年でありますことを願うばかりですね。
落ち着かれたら、またお立ち寄りくださいませ。
お目に掛かれますのを楽しみにしております。
お寒さの折、どうかご自愛くださいませ。
上のような文面は、被災地への年賀状に限ってのことではなく、病気を患った知人や友人あての年賀状などでも同様でしょう。「おめでとう」と言いにくい場合の賀状でも、相手の気持ちになって、前途に光明を見出すような前向きな言葉を用いたいものです。
年賀状はその年初めて手にする手紙です。新しい年を迎え、その一年の相手の健康や幸せをともに願うということが目的ですから、相手への思いやりを第一に、清らかな気持ちで心をこめて綴りましょう。