共通語な方言
プロフィール
篠崎晃一(しのざきこういち)
1957年、千葉県生まれ。東京女子大学教授。 専門は方言学、社会言語学。方言調査の傍ら、各地の美味いモノ、美味い酒を供する居酒屋を探索することも楽しみとしている。『アレ何?大事典』『日本語でなまらナイト』『ウソ読みで引ける難読語辞典』『アルファベット略語便利辞典』『ことばの えじてん』(以上、小学館)等の監修の他、『例解新国語辞典』(三省堂)編修幹事。方言関連の専門書以外に、毎日新聞社との共著『出身地(イナカ)がわかる!気づかない方言』(毎日新聞社)等がある。
コラム記事一覧
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第22回 「塩味が濃い」と感じたとき何というか?
どうも関西で供される白みその味噌汁や九州の甘い醤油は苦手である。味覚は人それぞれというが、何をおいしいと感じるかは個人差だけでなく、地域差もあるような気がしてならない。天ぷらにソースをかけたり、トマトに砂糖をかけたりは序の口で、岡山ではかつ丼にデミグラスソースがかかっていたり、名古屋の小倉トースト、あんかけスパゲッティーなどなど…。まあ人それぞれなので“意外な組み合わせ”としか言いようがない。 か…
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第21回 筋肉痛を表す方言
情けないことに、久しぶりに自転車をこいだら案の定、ここ二、三日筋肉痛が治らない。特に太もものあたりがぱんぱんにはって、階段の上り下りもひと苦労なのである。 この筋肉痛の状態を、京都や大阪を中心とした関西圏では「みぃいる」とか「みぃはいる」と表現する。「よう歩いて、みぃいってしもた」「こんなキツイ運動したら明日からみぃはいるわ~」といった具合だ。『日本国語大辞典』によれば、この「身が入る」という…
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第20回 授業の間の休み時間を何と呼ぶか?
小学生の頃に「ギョーカン体操」なるものが行なわれていたことを思い出した。通常の10分間の休み時間とは異なり、2時間目と3時間目の間の休み時間が20分間あって、その時間帯に全校生徒が校庭でラジオ体操を行なうのである。当時はラジオ体操の別名が「ギョーカン体操」だと信じて疑わなかったものである。「ギョーカン」が「業間」に対応すると知ったのはずっと後のことであった。確かに授業と授業の間であるから「業間」…
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第19回 「腹が強い」「お腹が大きい」「お腹がふとい」???「満腹」を表現する方言
「食欲の秋」という甘いことばの反動が現れる頃である。毎日体重計を見つめて考え込んでいる同志も多いのではなかろうか。忘年会シーズンも間近で、もはや改善する余裕もない。 さて、先日、秋田へ行って飲食店で良く耳にしたのが「腹つえー!」「腹っつぃ!」。 「腹が強い」といっても腹筋を鍛えているわけではない。どんなものを食べても絶対にお腹を壊さない強靭な胃袋を持っているわけでもない。秋田では「うーたくさ…
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第18回 ところ変われば痛みも違う?
「あがっ!」。突然の叫び声。沖縄出身の友人が机の角に足の小指をぶつけたらしい。この「あがっ」は、沖縄で、体の一部を何処かにぶつけたり指を切ったりなど、とっさの痛みのときに思わず口から発する感嘆詞だ。この「あがっ」にまつわる情報を各方面で探っていたら、あったあった、見つけましたよ“あがっラー油”!!沖縄産ハバネロ使用とあり、かなり辛い代物のようだ。宣伝文句から推測するに、「辛いを超えて痛いほど」と…
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第17回 「あとぜき」って何をすること?
「あとぜき」(写真)。熊本市内の図書館の出入り口に貼られた注意書きである。公共施設でありながら、よそ者には何とも不親切な貼り紙ではないか。そうは言っても、学校の教室や職員室の出入り口にも貼られていることが多く、熊本県人には定番の表現だからどうしようもない。意味は「扉を開けたあとは必ず閉めなさい」。熊本ではまったく当たり前の表現なのだ。この仮名4文字にそれだけ多くの情報がこめられているとは…。戸を…
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第16回 疲労感を表す方言で出身地がわかる!?
大人数での待ち合わせは約束の時間に全員揃うことが難しいものである。知人たちと待ち合わせしていたある日のこと、約束の時刻を少し回った頃に、知人の後輩が二人、ものすごい勢いで走ってきた。到着するなり一人が「あーこわい、こわい!」。「別に怒ってないよ」と平然としていた知人も、もう一人の「いやーせこー」のひと言に、「誰がケチ臭いねん」と思わずエセ関西弁でツッコミを入れていた。脇では別の知人が「そりゃせづ…
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第15回 「補助輪付き自転車」もところ変われば呼び名も変わる
関西の大型スーパーをぶらぶらしていた時のことである。自転車売り場を通りかかると、「コマ付き」という表示が目に留まった。仮面ライダーの乗り物に似せた子供用自転車かと思いきや、その表示の下には補助輪付き自転車が数台並んでいたのである。まだカメラを持ち歩く習慣のなかったころの話で、証拠写真が無いのがいささか残念である。 共通語では「補助輪付き自転車」とか「補助輪付き」「補助付き」などと堅苦しい言い方…
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第14回 粉末ジュースがコップの底に溶けきれずに残っているときなんというか?
子供の頃に粉末ジュースなるものを喜んで飲んでいた覚えがある。コーラの粉末タイプもあり、いろいろなメーカーから発売されていたはずなのに、エノケンこと榎本健一が歌った「ワタナベのジュースのもとです、もう一杯♪」(*)というCMソングが今も耳にはっきりと残っている。粉末状の素を水で溶かすだけでジュースができあがってしまうという、子供にとってはなんとも魅力的なものであったが、粉末が完全に溶けきるまでひた…
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第13回 まっさか面白いコラム?
「このケーキいきなりおいしい!」、仙台出身の学生が発したひと言に一同「はぁ???」。 宮城では「いきなり」を、強調の表現「とても、非常に」の意味で使うのだ。共通語では「いきなり泣き出した」「いきなり話しかけられた」のように、物事が突然生じることを表すが、「突然おいしさが脳を刺激した」とでもいうような感覚なのだろう。 ちなみに「いきなり団子」は熊本のお菓子。語源説はいろいろあるらしいが、そのひ…
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