前回は甲子園に書いてもらって光栄だった。しかし、本当に甲子園が私に憑依を? 自分でもよくわからないのである。
汗ばむことも多くなってきた5月、野球から汗続きで今回のテーマは「汗」にしようと思う。
汗くさいテーマだけど、我々は汗をかかずにはいられないし、汗のない人生などつまらない。
サブタイトルの「汗血馬」とは、血の汗を流し、一日に千里を走るといわれた中国の名馬だという。
「血の汗流せ」は『巨人の星』においては「そのくらいのつもりで練習しろ」というような意味だが、本当に流す生き物がこの世にいるなんて、最初に知ったときはおどろいた。いや、誇張や比喩かもしれないのだが、とにかくたいへんドラマチックな馬であり、もちろん涙も拭かなかったのだろう。そういえば星飛雄馬の名前にも馬がつく。汗血男、それが彼だったのか。
年を重ねていくにつれ、汗のかき方が変わってきた。体の汗はそう変わらないが、顔にかく汗が明らかに増えた。若いころはハンカチはおもに手だけを拭くものだったが、どんどん顔の汗を拭く割合が増えてきた。夏以外の季節にも顔汗をかくようになったわけであり、よく考えたら2枚持ってトイレ用と使い分けたほうがいいような気がしてきた。
最近気に入りのハンカチは、手ぬぐいを半分に切ったものである。尻ポケットの中でもすぐ乾くし、すぐれた布だと思う。
そう暑くない季節にどういうことで顔汗をかくかというと、食事である。食べものの熱、辛さ、そしてすっぱさに反応する。
高校時代からの友人に「酢探知機」と呼ばれている男がいる。冬に居酒屋で大汗をかいているので不思議に思うと、お通しのマカロニサラダのマヨネーズの中の酢を探知していたりするのだった。その「酢探知機」に、自分もなってしまった。そういえば父親もそんなところがあり、遺伝的なものかもしれない。
寿司屋でしきりにハンカチで顔を拭く。ドレッシングや冷やし中華でも汗が流れる。そういう体質ではない人から見れば奇異なものだろう。別にそれで困ることはないので、気持ちよく布で顔を拭いてからお勘定だ。