深谷圭助先生は、イギリス、シンガポール、タイなどでも、英英辞典を使った辞書引き学習を紹介し、指導しています。 母語としての英語を学ぶイギリスの子どもたちも、日本と同じように外国語として英語を学ぶタイの子どもたちも、この学習法で言葉の力を付けているそうです。深谷先生に各国の子どもたちの様子、また先生方の反応を聞いてみましょう。
辞書引き学習は、日本国内での手応えから、海外の教育においても効果的であろうと考えていました。そんなとき、ある国際学会で知り合ったシンガポールのエドモンド・リン先生から、辞書引き学習をシンガポールで紹介する機会をいただきました。2010年のことです。
イギリスでの辞書引き学習実践は、ジャパンファウンデーション・イギリス事務所の紹介で、キャッスルモールトンCE小学校で行っています。 ジャネット・アドセット校長が辞書引き学習に強い関心を持たれ、同校のカリキュラムに週1コマの"jishobiki"が組み込まれました。
海外では、シンガポール以外にもイギリスでも指導されていますね。何歳くらい(何年生)のお子さん方でしょうか。
主に小学校2年生から5年生くらいの子どもたちですね。
辞書引き学習に出会う前、お子さん方は辞書を使っていたのでしょうか。使っていたとしたら、その使い方はどのようなものでしたか。
日本と同じですね。わからない言葉があれば、辞書を使って調べるように指導されていたようです。
ふせんは、海外のお子さんもよく使うものなのでしょうか。辞書引き学習で初めて使うお子さんもいましたか。
日本と同じようにふせんは珍しいものではありませんが、辞書にこのように大量にはるというのは新鮮だったようです。
辞書引き学習に取り組んだお子さん方の反応はどのようなものでしたか。
国を問わず、学年を問わず、「やり始めたら止まらない」という反応でした。「もっとやりたい!」と口々に言っていました。4線が印刷された新しいふせんも紹介したのですが、「このふせんはどこで買えるの?」とたくさんの子どもたちに聞かれました。
イギリスには半年毎にいらして、お子さん方の成長の様子をご覧になっているとのことですが、どのような変化がありましたか。
辞書を身近に置く生活をすると、子どもたちの学習に対する主体性が高まるようです。子どもたち同士の議論も活発になってきました。
海外の先生方はどのような感想を述べられていますか。
「シンプルだけど、パワフルな学習法ですね」と異口同音におっしゃっています。子どもたちが集中して取り組む姿に、みなさん驚かれます。
タイでは、日本と同じように外国語としての英語を学ぶ際に辞書引き学習を体験されていますね。お子さん方の様子はいかがでしたか。
外国語として学ぶ場合でも、母語として学ぶ場合でも、同じように言葉探しをしながら辞書引き学習をしていました。
子どもたちの学習の最も基礎的な部分を作るのが、語彙の学習です。知っている言葉探しから始まり、ふせんをはりながら次々と言葉探しをする語彙の学習。これを楽しむ様子は、国や地域を超え、言語を超え、どこでも全く同じですね。
日本の子どもたちがこれから英語の辞書引き学習をするにあたり、海外でのご経験、事例から学べることがありますか。
日本語の語彙の中に、英語由来の語彙はたくさんありますから、外来語を手がかりとして語彙学習を行うことはごく自然なことです。英語学習のモチベーションを高めるために、こうした学習方法の工夫は重要です。辞書引き学習が、子どもたちの英語学習への意欲を高め、効果的な語彙学習につながるという期待は、イギリス、シンガポール、タイでの実践的研究からごく自然なことと考えています。日本でもぜひ、国語と同じように英語でも取り組んでいただければと思います。
海外の国に辞書引き学習を紹介されることになったきっかけはどのようなことでしたか。