くま【熊】

〔名〕
(1)クマ科に属する哺乳類の総称。体はよく肥え、がんじょうで、毛はあらく、毛色は褐色、黒色、白色など種類によって異なる。体長は最大種ホッキョクグマで約三メートル。四肢は太くて短く、強大なかぎ爪を備える。尾は短い。臭覚が優れ、雑食性で魚、小獣、木の実、草などを食べる。冬は穴の中で絶食して過ごすことが多い。肉は食用、毛皮は敷物、胆は「くまのい」といって薬にする。北極地方から熱帯林まで分布し、七種がいる。日本には本州以南に、黒色でのどの下に三日月形の白斑のあるツキノワグマが、北海道には大型のヒグマがすむ。学名はUrsidae 《季・冬》
(2)毛深いこと、また、毛深い人をいう。
(3)劇場で、前に鉄柵(てっさく)のある立見席にいる観客。おりの中の熊と似ていたところからの称。立見。大向う。
(4)髪がのびたのを表現するため、鬘(かつら)の月代(さかやき)の部分にはった熊の毛。
(5)盗人・てきや仲間の隠語。
(6)黒色や墨をいう。
(7)ほくろをいう。
(8)曇り日をいう。

〔語素〕
動植物名の上に付けて、形が大きいこと、力が強いことなどをあらわす。「くま蜂」「くま笹」「くま蝉」など。

〔語源説〕
(1)穴居するところから、クマシシ(隈獣)を成語とするか。くらがりに住むところから、クマ(隅)の義か。
(2)クマ(隠)の義〔言元梯〕。
(3)暗くて黒い物の隅をクマというところから、黒い獣の義。
(4)体にある月の輪を月のクマに見立てたもの。
(5)人に取り付いて組むところから、クム(組)の転。
(6)カミ(神)の転声。
(7)神の意の古語クマに、熊の意の百済方言クマの字「熊」を借りたことによって生じた転義。

〔日本国語大辞典第二版より〕

 
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